城塞（下） (新潮文庫)

軍神と言われた家康と、秀吉の側室の淀殿では、最初から勝負が見えていた。大野修理という側近が、武人というよりも、淀殿のご機嫌とりにしかすぎなかったというのが、大阪方の悲劇を倍加したのだろう。家康が、関ヶ原の戦いの後、何年か時間を置いて秀頼が成人するまで時間を置いたのは、幼い秀頼を殺害しては、世間の反発を買うという計算があってのことで、仮に秀頼がうつけで呆けであっても、殺害したであろうことは、容易に想像できる。まして、外見的にも知能的にもそれなりに見える秀頼は、目障り意外のなにものでも無かったであろう。家康の執念深さと残忍性は、信長に似ている。大阪城の落城とともに、豊臣の系譜が滅亡するのは、何か平家の滅亡の悲劇に似ている。大阪城落城を、遠くから眺める家康は、映画のワンシーンのようだ。